高齢者の再就職と雇用形態

 本年2月の国勢調査速報値によれば、日本の人口は初めて減少に転じました。少子高齢社会が現実のものとなった今日、少子化による労働人口の減少課題に対して、高齢者に雇用機会が均等に行きわたる対策を講じることで、労働人口は維持できると言われています。今後、高齢者の方々がこれまで蓄積してきた豊かな知識と経験を活かせる新たな場も広がり、雇用の機会が増えていくことが期待されています。

日本には65歳以上の高齢者が約3400万人います。人口1億2700万人の26.8%を占めています。そのうち現在約680万人が労働市場で働いていますが、健康的に働ける期間を伸ばして、高齢者の雇用機会が増えれば、少子化による労働力減少をカバーできるというわけです。

 

近年、国の財政環境の悪化によって、年金・社会保障制度の見直しは必須のものとなっており、高齢者の生活の安定が脅かされる少子高齢社会は厳しいものがありますが、高齢者の行動が政治や経済を左右する日本において、高齢者の雇用の拡大はこの課題解決に繋がる道ではないでしょうか。

 

ポイントになることが一つあります。高齢者就業のために、働く場としての企業との雇用形態をどのように考えるかです。

高齢者は正社員の身分は概ね維持できなくなっています。そこで、個人事業主として身分を確定し、働く場としての企業に再就職する選択肢が生まれます。あるいは、資本金一円で会社を立ち上げられる制度改正が行われましたから、自分の会社を設立して一人事業者として、これまで雇用関係を結んでいた勤務先と業務受注関係を結び直す方法もあります。働く場としての企業と業務請負契約を結ぶ選択肢です。

 

個人事業主か、あるいは会社を設立するのかで、所得税、地方住民税の額を始め、様々なことが異なってきます。

個人事業主の場合、所得税を支払うので、利益がでなければ、税金は掛かりません。法人の場合、法人住民税の均等割りで毎年約7万円は赤字でも支払わなければなりません。

社会保険負担も留意が必要です。個人字事業主は、国民健康保険と国民年金に加入すれば問題はありませんが、法人の場合、従業員の分も含め、健康保険と厚生年金保険への加入が義務付けられます。

個人事業主は書類を2種類提出するだけで事業を開始・廃止することが出来ます。税の申告も

法人の税務申告と異なり、個人事業主は確定申告が青色申告となり簡単です。

 

 一方、会社法人の優位性は、取引先や銀行から見た信用度が高まる、資金調達、取引先の幅が広がる、人材採用の幅が広がる、節税効果が得られる、出資の範囲内での有限責任となり、経営者のリスクが減る、事業の継続性が高まり、事業承継がしやすくなるなど、事業発展が見込まれる場合には、魅力的な選択肢となります。

 

事業の安定性、発展性が確かな場合は、会社の雇用関係が終わる定年の65歳からの企業設立も可能となりますが、まずは個人事業主として働く場との業務契約を締結し、見通しが確かなものとなった段階で、法人化に切り替えるといった方法もあります。

 

高齢者世帯の平均貯蓄は約2500万円と言われていますが、高齢者が元気に働く期間を伸ばしていければ、平均貯蓄額を積み増して、老後のさらなる生活の安定を図ることも可能となるのではにでしょうか。