法定後見人選任の申立てと注意点

申立ての準備

(1)3類型のどれにあたるか

ご本人の判断能力の状態が、どの類型にあたるかを選びます。

後見:日常生活の買物ができない、あるいはほとんどできない。
保佐:日常生活の買物はできても、不動産や車、貴金属など高価な品を一人で買えない
補助:高価な品を一人では買えるかもしれないけど、心配。

(2)申立てをする裁判所

ご本人の住民票の住所地、あるいは実際に暮らしている場所を管轄する家庭裁判所に申し立てます。

(3)申立てができる人

本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、検察官、市区町村長が申立てを行えます

四親等内の親族とは、主に以下の方になります

  • 親、子共、孫、ひ孫
  • 兄弟姉妹、甥、姪
  • 伯父(叔父)、伯母(叔母)、従兄弟、従姉妹
  • 配偶者の親、配偶者の子、孫、配偶者の兄弟姉妹

(4)書類の準備

裁判所により提出する書類が異なる場合がありますので、詳しくは裁判所でご確認下さい。(各家庭裁判所に書式が用意されています)

提出書類

  • 申立書、申立書付票
  • 申立人照会書、本人の状況照会書、後見人等候補者照会書
  • 親族関係図
  • 親族の同意書
  • 本人の財産目録、収支予定表
  • 診断書及び診断書付票
  • 療育手帳(愛の手帳)
  • 本人の登記されていないことの証明書(法務局で発行)
  • 後見人候補者の身分証明書(区役所等で発行)
  • 本人及び後見人候補者の戸籍謄本
  • 本人及び後見人候補者緒住民票

申立から調査、選任

(1)面接予約

必要な書類を整え、裁判所に電話をして、面接の予約をします。

裁判所によっては、面接予約ののち、申立書類一式を予め提出することを求められます。

(2)申立人・後見人候補者との面接

面接の予約日時に、裁判所の担当者が申立人・後見人候補者に会い、本人の生活状況・財産状況、後見人候補者の生活状況、今後の方針などについて、質問を受けます。

内容により資料の追加提出を求められることもあります。

(3)本人の調査

本人の意思を尊重するため、申立て内容について、裁判所が本人から直接意見を聞きたいと判断した時に行われます。

(4)親族への意向照会

審理の参考とするため、申立て時に同意書の提出のなかった親族に対して、書面等により申立てに関する意向を確認する場合があります。

(5)精神鑑定

鑑定とは、本人に判断能力がどの程度あるかを医学的に判断するための手続きです。申立て時に提出した診断書とは別に、より厳格な資料が必要だと判断された場合に、家庭裁判所が医師に鑑定依頼する方法でおこなわれます。

(6)後見人の選任

調査や鑑定が終了した後、最も適任と判断された人が後見人として選任されます。

POINT!

成年後見申立の注意点!

(1)申立て後の取り下げは、原則できません。
公益性や本人保護の立場から、いったん申立てがされた後は、裁判所の許可がなければ申立てを取り下げることはできません。

(2)後見人には、申請書に後見人候補者として記載した人が必ず選任されるとは限りません。
家庭裁判所は、本人の財産管理等をより適正に行うという観点から、専門的な知見を有する専門職(弁護士、司法書士、社会福祉士等)が関与する必要性があると判断した場合には、候補者の方ではなく第三者の専門職を後見人に選任したり、候補者の方を選任した上で後見等監督人を選任したりすることがあります。その場合、裁判所が決めた報酬額を、本人の財産の中から支払うことになります

(3)後見・保佐が開始された場合、本人は、医師・税理士等の資格や会社役員、公務員の地位を失います。
補助が開始された場合は、特に資格制限は受けません。

(4)申立てのきっかけとなった法律行為(例えは、代わりに遺産分割に参加する)だけをすればよいのではなく、後見人等は、本人のために援助するための職責を負い、通常は、ご本人がお亡くなりになるまで続きます。


当事務所では、このような点も十分ご説明させていただき、成年後見制度に関する正しい認識を持っていただいたうえで、申立書類の作成や、親族後見人となる方へのサポートをご提供させていただきます。